
CAEのライセンスが足りない」という声が現場から上がると、多くの企業は追加購入を検討します。しかし、その判断の前に確認すべきことがあります。それは、今あるライセンスが実際にどれだけ使われているかです。
本記事では、CAEライセンスの利用率を測る具体的な方法と、数字の正しい読み方を解説します。
なぜ「保有数」だけでは判断できないのか
CAEソフト(Ansys、Abaqus、Nastran、STAR-CCM+など)は1ライセンスあたりの費用が高く、保有数の判断ミスが大きなコストにつながります。
ところが、多くの現場では次のような状況が起きています。
- 「足りない」と感じているのは、特定の時間帯だけ
- ソフトを起動したまま放置され、実際には使われていないライセンスがある
- 部門ごとに個別購入しており、全社での合計利用状況が誰にも見えていない
つまり、「足りない」と「余っている」が同時に起きている可能性があるのです。
利用率を測るために見るべき4つの指標
- 平均利用率
一定期間における「使用中ライセンス数 ÷ 保有ライセンス数」の平均です。全体の傾向をつかむ基本指標ですが、これだけで判断すると誤ります。
- ピーク利用率
最も多く使われた瞬間の利用率です。平均が低くても、ピークが100%に達していれば、その時間帯は不足しています。
- 拒否(デナイアル)回数
ライセンスがすべて使用中で、起動しようとしたユーザーが使えなかった回数です。「本当に足りていない」ことを示す唯一の客観的な証拠です。
- アイドル時間
ライセンスを取得したまま、実際には操作されていない時間です。昼休みや会議中、終業後に起動したまま放置されているケースが典型です。
利用率を測る3つの方法
方法1:ライセンスサーバーのステータスを定期取得する
FlexLM(FlexNet Publisher)であれば lmutil lmstat -a、RLMであれば rlmutil rlmstat -a で、その時点の使用状況を確認できます。これをスクリプトで定期実行し、記録していく方法です。
- メリット: 追加コストなしで始められる
- デメリット: 取得間隔の間の利用が見えない。拒否回数やアイドル時間は把握できない
方法2:ライセンスサーバーのログを解析する
FlexLMのデバッグログには、ライセンスの取得(OUT)、返却(IN)、拒否(DENIED)が記録されています。このログを解析すれば、ユーザー別・時間帯別の利用状況や拒否回数を把握できます。
- メリット: 拒否回数まで正確に把握できる
- デメリット: ログ形式はベンダーごとに異なり、複数のライセンスマネージャーを使っている場合は解析の手間が大きい。アイドル時間はログだけではわからない
方法3:ライセンス管理ツールを使う
複数のライセンスマネージャー(FlexLM、DSLS、RLM、Sentinelなど)の情報を自動で収集し、利用率・ピーク・拒否回数・アイドル時間をまとめて可視化する方法です。
- メリット: 全社・全ベンダーの状況を一画面で比較できる。アイドルライセンスの自動回収なども可能
- デメリット: 導入の手間と費用がかかる
数字の読み方:3つのパターン
測定結果は、次のように読み解きます(以下は説明用の例です)。
| パターン | 平均利用率 | ピーク | 拒否回数 | 判断 |
| A | 40% | 100% | 多い | 時間帯の偏りが原因。追加購入の前に、利用時間の分散やアイドル回収を検討 |
| B | 40% | 70% | ゼロ | 保有数が過剰。次回更新時の削減候補 |
| C | 85% | 100% | 多い | 本当に不足している。追加購入の根拠になる |
ポイントは、平均だけ、ピークだけで判断しないことです。拒否回数とセットで見ることで、「追加購入すべきか」「削減できるか」「運用で解決できるか」を判断できます。
まずは1か月、記録することから
利用率の把握は、特別なプロジェクトである必要はありません。まずは主要なCAEソフト1つを対象に、1か月間の利用状況を記録してみてください。それだけで、次回のライセンス更新時に「なんとなく前年と同じ数」ではなく、データに基づいた判断ができるようになります。
OpenLMでできること
OpenLMは、FlexLM、DSLS、RLMなど主要なライセンスマネージャーに対応し、CAE・CAD・EDAソフトの利用率、ピーク、拒否回数、アイドル時間を自動で可視化します。アイドル状態のライセンスを自動回収する機能(ライセンスハーベスティング)により、追加購入せずに利用可能なライセンスを増やすことも可能です。