GPU1,600基、15.5エクサFLOPS超——理研の新スパコン「理究」に宿る千利休の”守破離”

神戸港島に、日本最大級のAI演算基盤が姿を現した。計算ノード400台、NVIDIA Blackwell GPU 1,600基。理化学研究所(理研)はこれを「理究(RIKYU)」と名付けた。

名前の由来は語呂合わせではない。1,019件の公募から選ばれたこの名には、茶人・千利休の教え「守破離」が宿る——型を守り(守)、破り(破)、離れて自在に至る(離)。理研によれば、AIがまず既存知を学び、そこから新たな研究を切り拓き、最終的に人間とAIが共に未踏の領域を開く、という意味が込められている。

性能もその名に見合う。FP8演算で15.5エクサFLOPS超。神戸のR-CCS(松岡聡センター長)で「富岳」と並走稼働し、本格運用は今年7月を目標としていた。理研は「幅広い共同利用」に向けた利用者支援体制も計画している。

ここに、業界紙があまり触れない論点がある。一企業のIT部門なら、使うツールも社内チームもある程度把握できる。だがR-CCSのような国立HPCセンターは、学術機関・企業・海外研究者まで含む多数の外部グループが、それぞれ異なる商用・OSSソフトウェアを持ち込んで共有する場だ。「誰か一人が全体を掌握している」体制は、そもそも存在しない。誰が・何を・どれだけ使っているかの可視性は、そこでは”あれば便利なもの”ではなく、共同利用が野放し状態に陥らないための歯止めになる。

なぜ今、これが日本全体の課題になっているのか。

  • 政府主導の巨大投資が同時多発——ラピダス(累計4,249.5億円)、ソニー・TSMC熊本合弁(7,470億円)、タワーセミコンダクター富山・新潟拠点(経産省補助最大1,600億円)。いずれも一企業内で完結しない。
  • 開発体制が「一社完結」から「複数企業・拠点の共同」へ——富士通・ファナック・安川電機・川崎重工のNVIDIA共同基盤、ホンダ・日産のSDV協業再協議など。
  • ベンダー再編がライセンス体系そのものを作り変えている——シノプシスによる350億ドル規模のアンシス買収と「Ansys 2026 R1」。
  • 投資の伸びに管理体制が追いついていない——SAMACのような専門団体はあるが、SAM/ITAMという概念自体、日本ではまだ欧米ほど浸透していない。

理究は、すでに稼働しているか、その目前にある。「利用者支援体制」が具体的な形を持つ前に——この論点への一番乗りは、今この瞬間にしかできない。

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