
たった1枚のスクリーンショットから始まった
きっかけは、ある1枚のスクリーンショットでした。
私は、Claude for Organization の請求ダッシュボードを確認していました。
現在、当社では48ライセンス(シート)を契約しています。基本料金に加え、新規シート追加時に発生する日割り請求も含めると、毎月約3,600ドルを支払っています。年間に換算すると43,000ドル以上。しかもこれは、組織規模が今後まったく拡大しないという前提での金額です。
画面には、その合計金額の下に小額の請求が次々と並んでいました。2.47ドル、36.03ドル……。
一つひとつは小さな金額ですが、積み重なると無視できないコストになります。まさに「気付かないうちにコストが膨らんでいく」状態でした。
ソフトウェアライセンスの可視化を使命としているOpenLMのCEOである私自身が、お客様に避けていただきたい状況に陥っていたのです。
そして私は、「Team Plan」を前に、重要な判断を迫られていました。
月額契約を継続するべきか。それとも年間契約へ移行するべきか。
魅力的な20%割引
表面的には、答えは非常にシンプルに見えました。
年間契約へ切り替えれば、1シートあたりの料金は25ドルから20ドルへ下がります。
48名規模のチームで考えると、年間で数千ドル規模のコスト削減になります。財務部門から見れば、「迷う必要のない選択」に思えるでしょう。
しかし、詳しく調べるにつれ、SaaSの料金体系が持つ「オール・オア・ナッシング(全員一律)」という現実が見えてきました。
AIサービスの世界では、利用者ごとに異なる契約形態を柔軟に組み合わせることはできません。
たとえば、10名のヘビーユーザーだけを年間契約にし、残り38名を月額契約にするといった運用はできないのです。
組織全体で年間契約に移行するか、あるいは柔軟性を維持する代わりに月額料金を払い続けるか。
選択肢はそのどちらかしかありませんでした。
4万〜5万ドル規模の「見えないリスク」
さらに、今後の組織拡大や、パワーユーザー向けのPremiumシート(月額125ドル)の導入も考慮すると、話はまったく別の規模になります。
これは数千ドルの判断ではありません。
年間で4万〜5万ドル規模のコミットメントになるのです。
さらに、Enterpriseプランという選択肢もありました。
ダッシュボードには、
- SCIMによるユーザー管理の自動化
- Audit Logによるセキュリティ強化
- 50万トークンのコンテキストウィンドウ
といった魅力的な機能が並んでいます。
しかしEnterpriseでは、API利用量に応じた従量課金モデルへ移行します。
CEOの立場から見ると、ここに大きな不確実性があります。
もしチーム全体が大規模プロジェクトでClaudeを集中的に利用した場合、請求額はどこまで増えるのでしょうか。
請求額が突然2倍になる可能性はないのでしょうか。
利用実態のデータがなければ判断できません。
その意味で、Enterpriseは単なるアップグレードではなく、「予測しづらいコストリスク」でもあるのです。
データに基づいて判断するために
多くの企業であれば、この段階で推測に頼るかもしれません。
20%の割引に魅力を感じ、「48人全員がきっと活用しているだろう」と考え、年間契約へ切り替える。
そうした判断も珍しくありません。
しかしOpenLMでは、自社が提唱する考え方を自ら実践することにしました。
高額な年間契約を結ぶ前に、まず利用状況を正確に把握する。
そのために、自社のモニタリング環境を導入することを決めました。
そしてあと1か月だけ、「柔軟性のためのコスト」を支払い続けることにしたのです。
なぜなら、私たちは「ゴーストユーザー」の存在を確認したかったからです。
AI利用者は大きく3つに分かれる
OpenLMの利用状況モニタリングを通じて、48シートの利用者はおそらく次の3つのグループに分類されると考えています。
パワーユーザー
開発者やアナリストなど、日常的に利用上限近くまでAIを活用しているユーザーです。
こうしたユーザーにとって、Premiumシートへの投資は非常に高いROIをもたらします。
標準ユーザー
文書作成やアイデア出し、情報整理などを中心に活用しているユーザーです。
この層にはStandardプランの年間契約が適しています。
ゴーストユーザー
導入当初の盛り上がりの中でアカウントは付与されたものの、ここ数週間ログインすらしていないユーザーです。
推測ではなく、可視化を
AIプラットフォームの「全員一律契約」という料金体系は、結果としてゴーストユーザーの存在を見えにくくします。
利用実態を把握しないまま年間契約へ移行することは、言い換えれば「誰も座っていない席」に対して料金を支払うことと同じです。
私たちはあと30日間、月額契約を継続します。
そして利用状況データが揃った時点で、どのプランが適切かを推測する必要はなくなります。
必要なライセンス数は何席なのか。
Premiumへアップグレードすべきユーザーは誰なのか。
利用されていないアカウントはどれなのか。
すべてをデータに基づいて判断できるようになります。
AI活用が広がる現在、最も高価なライセンスはPremiumライセンスではありません。
誰にも使われていないライセンスこそが、最も高価なライセンスなのです。
オレン・ガベイ(Oren Gabay) は、ソフトウェアライセンス管理および利用状況モニタリング分野をリードする企業、OpenLM のCEOです。
