
長年にわたり、GIS ライセンスは「柔軟」であることが当たり前でした。企業は永続ライセンス(買い切り)を購入し、比較的安価な保守費用を支払い、「同時使用(フローティング)」モデルで高価なライセンスを多くの技術者で共有してきました。
しかし、その時代は終わりを迎えています。
Esri ライセンスを管理している企業にとって、2025年後半から2026年にかけて起きる変更は、過去20年で最大の転換点です。
私たちはこれを **「Esri ライセンス移行(サイレント・マイグレーション)」**と呼びます。
なぜ「サイレント」なのか。それは、1回の大きな契約変更ではなく、管理上のデフォルト設定変更や技術的なサポート終了によって、静かに進行するからです。
ここでは、2026年の Esri ライセンス変更で何が起きるのか、そしてどう対応すべきかを解説します。
目次
- ArcGIS 永続ライセンスの変更
- 同時使用ライセンスの終了(コストの問題)
- 2026年のタイムライン:技術的な「ロックアウト」
- 大規模組織向け Esri ライセンス戦略:最適化
- まとめ
ArcGIS 永続ライセンスの変更
最初の変化は「管理面」です。これまでソフトウェアを使い続けるためには、毎年「保守(Maintenance)」を支払うだけで十分でした。
しかし 2025年後半以降、状況は大きく変わります。
新しい Esri の方針では、ArcGIS Desktop の永続ライセンス更新見積は「保守」ではなく、自動的に「ユーザータイプ(年額サブスクリプション)」に変換されます。
これはつまり、
- 資産として所有する CapEx(資本支出)モデル から
- 毎年支払う OpEx(運用支出)モデル への移行
を意味します。
これまで「所有している」と考えていた永続ライセンスは、実質的にレンタル契約へ移行することになります。
参考記事:2026年に向けたソフトウェア資産管理(SAM)のベストプラクティス
同時使用ライセンスの終了(コストの問題)
最も大きなコスト影響を与えるのが、同時使用(コンカレント)ライセンスの廃止です。
従来モデルでは、例えば以下のような運用が可能でした。
- 土木・建設エンジニア:100名
- 実際のライセンス保有数:20本
- 同時に使う人が限られるため、1:5 の共有比率でコストを抑制
しかし、新モデルは 「指名ユーザー(Named User)」 です。
このモデルでは、
- 100名の技術者 = 100本のサブスクリプション
となります。共有はできません。
週に1回しか地図を開かない「ライトユーザー」であっても、フルのサブスクリプション費用が必要になります。
これが、Esri ユーザータイプが GIS 予算に大きな影響を与える理由であり、企業向け GIS 環境でコストが急増する最大の要因です。
2026年のタイムライン:技術的な「ロックアウト」
今回の変更は、単なる価格の問題ではありません。
技術的に使えなくなる期限が設定されています。
2026年には、特に重要な2つの日付があります。
- 2026年3月1日
ArcMap が正式にサポート終了
→ 以降、サポート・セキュリティ更新は一切なし - 2026年Q2(第2四半期)
ArcGIS Pro の同時使用ライセンスが廃止
→ Q2以降にリリースされる ArcGIS Pro(おそらく Pro 3.7 以降)では、
技術的にコンカレント接続ができなくなります
※ ArcGIS Pro 3.6 に「固定」することで一時的に回避は可能ですが、
新機能が使えず、将来的にはセキュリティリスクも高まります。
大規模組織向け Esri ライセンス戦略:最適化
ライセンス共有によるコスト削減ができなくなった今、
必要なのは 「ライセンス最適化」 です。
指名ユーザー環境では、
- 実在しないユーザー
- 90日以上ログインしていないユーザー
に割り当てられているサブスクリプションは、完全な無駄になります。
2026年の Esri ライセンス変更に対応するため、以下の3点を必ず把握してください。
- ゴーストユーザーの洗い出し
30日以上ログインしていないユーザーは誰か
→ 即座にライセンス回収が必要 - ユーザータイプの最適化
「Professional」を割り当てられているが、
実際は「Creator」機能しか使っていない人は誰か
→ ダウングレードは非常に効果的なコスト削減策 - 自動回収(アクティブ・ハーベスティング)
OpenLM のようなツールを使えば、
利用していないユーザーから自動的にライセンスを回収可能
→ プロジェクト異動時も自動対応
参考記事:OpenLM License Access Control(LAC)の進化
まとめ
「サイレント・マイグレーション」は、もはや終わりました。
サブスクリプションへの強制的な移行は、すでに始まっています。
ユーザー単価は確実に上昇しますが、
ユーザータイプを正しく管理・最適化すれば、コスト増加は抑制可能です。
旧来のライセンスモデルへの扉は、確実に閉まりつつあります。
その扉が完全に閉まる前に、予算面で正しい側に立っているかを確認してください。
